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2025/08/29 19:50


HUMで主に使用している糸は、手縫いでしか扱えない「シニュー糸」
⁡かつて動物の腱を裂いて糸として使っていたことに由来します。
現在はワックス加工された丈夫なポリエステル糸として受け継がれ、
アウトドアギアやネイティブアメリカンの工芸品など、タフな場面でも信頼されてきました。
シニュー糸の最大の特徴は、一般的な糸にある「撚り(より)」がないこと。

ねじり合わせずフラットな形をしているため、縫い目に厚みと立体感が生まれます。
その結果、温かみがありながらも力強い存在感が宿り、革の表情をより豊かに引き立ててくれるのです。



撚りのないフラットな糸目は、ひと目で“手縫い作品”とわかる存在感を放ちます。


シニュー糸のデメリット
ただし、そんなシニュー糸にも弱点があります。
それは、色のレパートリーが少ないこと。

シニュー糸は手縫い専用の糸ということもあり、革製品全体で見ると製造コストの面からも使用される割合が少なく、
製造しているメーカー自体も限られています。
そのため、どうしても色数が少なくなってしまうのです。

現在HUMで取り扱っているのは、全部で 8色。


1番人気の「ナチュラル」は、使い込むほどに色が抜け、少しずつ透明感を帯びていきます。
白糸のように強いコントラストを出すのではなく、革そのものに溶け込むように馴染み、
経年とともに柔らかく自然な風合いへと変化していきます。


一方、ミシン糸は用途が幅広いため、数百から数千色もの豊富なカラー展開があります。
これは「好きな色を選べる」という点で、ミシン糸ならではの大きな強みです。

⁡イタリアンレザー「MARGOT(マルゴー)」

糸の話から少しそれますが、HUMで新たに取り扱いを始めた革「MARGOT(マルゴー)」。
その表面には“スクラッチ加工”と呼ばれる、弧を描くような細かな傷があえて施されており、自然が描いた模様のような個性が表れています。
和紙のような手触りと、イタリアンレザーらしい洗練された雰囲気をあわせ持つ、独特の魅力を持った革です。

マルゴーを使ったアイテムでは、イタリアらしい「クールで上品」な雰囲気を表現できるように、
従来のシニュー糸に加えて、革と同色のミシン糸もお選びいただけるようになりました。

マルゴー(グレー)× ミシン糸(同色)


⁡マルゴー(ピンク)×シニュー糸(ナチュラル)


糸ひとつで変わる表情

【シニュー糸】
撚りがなく、立体的でクラフト感のある表情。
丈夫で温かみを感じる仕上がり。
【ミシン糸】
均一で色数が豊富。
すっきりと洗練された印象に仕上がる。
同じデザインでも、糸を変えるだけで雰囲気がまるで違うものになります。
「クラフトの温もりを残すか」「革の個性をスマートに際立たせるか」。
その選択こそ、オーダーならではの楽しみです。

まとめ

•HUMの基本は「手縫い × シニュー糸」
•シニュー糸は撚りがなく、表情豊かでタフな仕上がり
•ただし色数は限られる
•ミシン糸は均一で色展開が豊富
•新しいイタリアンレザー「マルゴー」では、両方の糸を選べる
糸の違いは、作品の仕上がりを大きく変える要素です。
オーダーの楽しみを、ぜひ糸選びからも感じてみてください。